介護の仕事は、ケアの仕事だ。ケアとは簡単に言ってしまえば「お世話をすること」ではあるが、実際は「気配り」などの配慮を大切にしなければならない。この「気配り」もケアの一環だ。この気配りやお世話は、高齢者の身の回りのことを全て手伝うということではなく、できる範囲で本人の力を引き出すことでリハビリの一端を担うことが重要である。
例えば車椅子に乗っていて、一人でトイレができない高齢者をお世話する場合、介護者が完全に抱きかかえて立たせ、ズボンや下着を下げて便座に座らせればいいかといえばそうではない。歩くことができず車椅子を使っていても、手すりを使えば立てる場合もある。立つことは大変だが、ズボンや下着を下げることはできる人もいる。その人の「できること」と「できないこと」をしっかりと把握して、手を出しすぎないことも「気配り」のポイントだ。
なぜ手を出しすぎてはいけないのだろう。それは、介助をしすぎることでその人が本来使える力を抑えこんでしまい、弱らせてしまう可能性があるからだ。筋肉は使わなければ弱くなる。また手伝ってもらいすぎていると、本人も自分は何ができて何ができないかがわからなくなり、手伝ってもらうことが当たり前となってしまうことがある。すると心身ともに衰えやすくなってしまう。これを「廃用」という。介護の仕事は「お世話をすること」であるが、弱ってしまわないように、今持っている力をなるべく維持するように、そして少しでも安全に過ごしてもらえるように、リハビリを意識して自分で頑張れるよう支援することも大切なのである。